アフロ記者でおなじみ、稲垣えみ子さんの著書を定期的に購入して読んでいます!
「稲垣さんに興味は持ったけど、どれから読んだらいいの?」
という人にむけて、ランキング形式でおすすめ本を紹介します。
ミニマリスト、シンプルライフ、あるいはていねいな暮らしなどに興味がある人は、ぜひ読んで欲しいラインナップです。
寂しい生活
稲垣さんを知ったら、まず絶対に「どんな生活してるんだろ?」と興味をもつと思います。
そうすると、彼女の究極のミニマリスト生活が網羅的に、かつ深くまとめられているのが本書が最初の1冊におすすめです。
まぁ、その生活がすごい。
月の電気代はなんと驚異の150円!
住んでいる築45年のレトロ建築で、冷蔵庫置き場も洗濯機置き場もなし、収納もなし!
本の中で「ミニマリスト」という言葉は出てこないのですが、まさに究極のミニマリストと言えるでしょう。
『寂しい生活』にはその生活に至るまでの奮闘や、生活風景が描かれています。
ミニマリストと一口に言っても、色んなタイプがある。
傾向としては、断捨離や収納術といった具体的な生活面のミニマリストと、思想的なミニマリストに分かれると思います。
前者は女性が多く、後者は男性が多いイメージ。
稲垣さんはどうかと言うと意外と「思想的」な感じがしました。
以下、わたしが個人的に心に残った部分をご紹介します。
自分の目で見て、自分の頭で考えて、自分の手足でやってみるということ。もしやそのことを、今の世の中は「不便」と呼んでいるんじゃないだろうか。 だとすれば、不便って「生きる」ってことです。 だとすれば、便利ってもしや「死んでる」ってことだったのかもしれない。
絶対必要だとおもった電子レンジを捨てたら、料理に工夫が必要になった。
でもその「工夫」が楽しい。
脳みそを動かして考えて、体を動かして、それが生きる実感へと変わったのでした。
すこし前、たまたま見たNHKの「あさイチ」で「不便益」なんて言葉を聞きました。
一見して不便なことがもたらすメリットのことです。
例えば、掃除を掃除機からホウキと雑巾にすることによって、カロリー消費が上がり、ダイエット効果があるとか!
稲垣さんが得た「生きる」ってことも、不便益なのかもしれません。
何が必要なのか、本当に必要なのか、それは本当に自分を豊かにしているのか。一切の思考を凍結してきた。その挙げ句、増え続けるものに取り囲まれ、ますます家は狭くなり、もっと広い家を求めてさらにお金が必要だと思い、あくせくと働き競争し、時間がないからとさらに便利なものが欲しくなり、そしてまたモノが増え……欲望のスパイラルはどこまでも拡大し増殖し、とどまるところを知らない。
このことをすうす感じている人は多いかもしれない。
欲しい⇒お金減る⇒働く⇒欲しい…の無限ループ。
わたしもフリーター時代、バイトの疲れを癒すために栄養ドリンクを買って飲んでいました。
働くために買い、買うために働く。
働くことが至上の喜びであれば問題ないですが、なかなか100%そう言い切れることも珍しい。
稲垣さんのようにモノを捨てる・減らす、ということはそこから抜け出す術の1つだったんですね。
ミニマリストというある種の極端なスタイルを模倣することで、半強制的に消費社会の無限ループから脱却できる。
便利なものに囲まれていた私の暮らしは、いわば、必要な栄養や薬を補給してくれるたくさんのチューブにつながれた重病人のようなものだったのではないか。 チューブにつながれている限りは生命を長らえることができる。安心である。その代わり、ベッドから片時も離れることはできない。
今の時代、「これがなくちゃ生きていけない!」という状態は危険かもしれません。
変化の激しい時代、 一寸先は闇かもしれない。 (もちろん、光かもしれない)
永遠不変のものなんてない、そんな前提に立てば「便利ありき」の生活は危険なものだとわかります。
「これがなくちゃ…」よりも、むしろ「どうなっても生きていける!」という姿勢や知恵が大切です。
消費社会とは、モノを売ったり買ったりすることができる健康で強い人たちのためのサークル活動です。それは一方で、本当に救いを求めている人たちをはじき出していく会員制クラブに成り果てている。
消費は楽しい、でも大変ですよね…。
ただモノが増えていくなら、まだマシかもしれない。
でも現代は特に「モノ持ち競争」が盛んです。
SNSによって、見たくもない他人のリア充に嫉妬しなくてはいけなくなりました。
嫉妬は新たな消費を促す闘争心になったり、一方で敗北感や劣等感にもなったりします。
心をカッカカッカ燃やす生活。
それはしんどいです。
その意味で、非バトルタイプの人間が生きていく道のヒントが『寂しい生活』にはあるように思います。
わたしは稲垣さんの「寂しい生活」に、なんだか憧れます。
「面倒さ」「不便さ」と「煩わしさ」って違うと思うんですよ。
世の中は便利で簡単になったけど、なぜか煩わしさも増えていますよね?
「寂しい生活」には煩わしさがないように見えました。
稲垣さんのそのエッセンスがしっかり語られており、まず全体像を把握するには『寂しい生活』からぜひ読んでみてください。
もうレシピ本はいらない 人生を救う最強の食卓
「寂しい生活」を読むと、中でも稲垣さんの食生活には興味を持つのではないでしょうか?
シンプルメニュー、シンプル調理の食生活。
稲垣さんの著書では、彼女の考え方をさまざまなテーマにあてがいながら語っていくものが多いです。
後述する「ピアノ」や「一人のみ」、あるいは「旅行」なんかも。
中でも「料理」は、誰にとっても無関係ではない事柄。
その意味で、テーマ別ラインナップの中ではいちばんにとっつきやすい本だと思います。
また例えば節約の観点からも興味を持つ人は多いはず。
わたしは影響を受けて、ぬか漬けにチャレンジしました(笑)
老後とピアノ
憧れだったピアノの挑戦記です。
幼少期にいちどは挫折したピアノに50歳をすぎてから再度挑戦した記録。
どうしよもない老いと戦いながら、ピアノに向き合う姿が綴られています。
指が動かない、老眼で譜面が読めない、すぐ体が痛くなる…。
次々に困難に直面する稲垣さん。
その都度ガックリ落ち込みながらも、エッチラホッチラ試行錯誤を繰り返す。
実はわたしも20代をバンドを捧げた人で、楽器習得の難しさは身にしみてわかります。
でも恥ずかしながらその練習の中でわたしはほんとうの努力を知った気がする。
だから稲垣さんの奮闘を読んでいても「そうそう!それそれ!そんな感じ!」と、あの時の努力の感触がありありと蘇ってきます。
後悔するのは、その努力の感触をもっと早くに掴んでおけば…!ということです。
稲垣さんも本書の中で散々書いていますが、歳をとればその成長は牛歩の歩み。
なんせ体がついていかない。
一難去ってまた一難、一歩進んで二歩下がる、七転び八起き…どうしたって困難がつきまといます。
ところが若い時は若い時で、忍耐強く努力することができなかったりする。
その意味で、本書は稲垣さんと同世代向けの本でありながらも、ぜひ若い人にも読んでほしいと思いました。
実際のところ、若いときだって自分の想像よりずっとずっと成長が遅いですよね。
その成長の遅さに絶望し、投げ出したくなるのは老いも若きもみんないっしょ。
しかし努力の先にちゃんとご褒美があることをいちど知ってしまうと、これがけっこう「努力体質」へと自分が変わっていきます。
なるべくはやく努力体質になるにこしたことはない。
だから若い人にも読んでほしいと思いました。
「努力」という、ちょっと身構えてしまうようなことが裏テーマになっているだけに、読むのに勇気がいりそう。
しかし稲垣さんの軽妙な文章が、シリアスさを良い感じに中和してくれます。
まるで目の前に落語家「稲垣亭 えみ子」が座って一席設けてくれるような…。
チャキチャキの江戸っ子のような文章です。
稲垣さんの文体の魅力も存分に味わえる1冊になっています。
一人飲みで生きていく
ここまでお察しのとおり、稲垣さんが一貫して取り組んでいるのは、強くなるための生活実験です。
「寂しい生活」では家電から離れることで、「もうレシピ本はいらない!」ではレシピから離れることで。
また「老後とピアノ」では、無理難題に挑戦することで。
それぞれどのように強くなっていけるか、あるいは結果としてどう強くなったかを綴っています。
そしてこの本の実験は「一人飲み」。
「男はつらいよ」の寅さんよろしく、一人飲みに憧れる稲垣さんは、それを実践していく中でまた強さを見出していきます。
ところで「強さ」とは何でしょう?
稲垣さんはいっかんして「ひとりで生きる強さ」を追い求めているように見えました。
ところが今回、一人飲みと言いつつも、他人が関わってくる。
捨てて、離れて、身軽になっていく方向性が多かった稲垣さんですが、今回は他人との間にどうやってじぶんの居場所を見つけるかに苦心しています。
ある意味では、これまでの書籍とは逆の方向性にあるのが本書です。
稲垣さんに人から離れる仙人道を求める読者も多いでしょう。
しかしわたしは、ふっついたり、はなれたりを繰り返す人間のほうにリアリティを感じます。
どうしたって、多くの人はそうやって個人と社会を行き来しながら生活しているからです。
今回は「稲垣えみ子、社会のなかに居場所をつくる」の巻。
強さを求めるなら、同時に「強いってなんですか?」という問いかけも必要ですよね。(「はじめの一歩」みたい)
「ひとりで生きる」ことだけが、強いわけじゃない。
『一人飲みで生きていく』を読んで、わたしは「なるほど、それも強さのひとつだなぁ」と思いました。
また本書を読みながら思い返したのは、伊藤洋志さんの『イドコロをつくる』という本です。
関連サイト:無職ニートにおすすめの本14選。人生の可能性は無限大!
イドコロとは、情報がスピーディに通り抜ける「正気を失う場所」から退避するための場所。
街中に存在するさまざまな場所に、ふーっと小休止するためのイドコロを見つける術を紹介しています。
イドコロのひとつとして紹介されているのが街の個人経営の居酒屋。
そこはまさに稲垣さんの「一人飲み」です。
「一人飲みで生きていく」で、
世界と繋がるスマホにも、絶対に繋ぐことができないものがあるのだ。それは、目の前のものである
という印象的な一文がありました。
インターネットの世界にも、広告、スキャンダル、ゴシップ、おカネ、トレンドがあふれるようになって久しい。
そして、それらはスマホ以前とは比べ物にならないくらいの量とスピードでわたしたちの目の前を駆け抜けていきます。
つまりスマホこそが「正気を失う場所」
だからそこから少しでも距離をおけて、かつ社会との関わりつつ、心を回復させる場所が必要です。
それこそが「一人飲み=イドコロ」というわけですね。
「一人飲みで生きていく」は、一人飲みに特化した「イドコロ解説本」にも読めました。
稲垣さんは独身ですが、ひとり飲みはパートナーがいる夫婦にもおすすめかと思います。
それぞれ別々に、一人飲みをする。
夫婦やカップルも長い付き合いににあると、すべてがお互いを通して経験するようになりますよね。
家庭はお互いに与えあっているものだし、趣味のコンテンツや、食事もすべて「ふたりの世界」で営まれるものになっていきます。
それは幸せであると前置きした上で、さらに「ひとりの力で得たなにか」もやっぱり楽しくて尊いもの。
パートナーも知らない人間関係があっても良いですよね。(いや、不倫とかじゃなくて(笑))
たんじゅんに、パートナーの愚痴を気兼ねなくこぼせる友達は欲しいでしょう。
これがお互いに共通の友人だと、その友人を経由して余計にややこしいことになったり(笑)
母でも妻でもなく(また父でも夫でもなく)、ひとりの自分に戻る時間。
一人飲みにはそんな時間でもあるんじゃないかと思いました。
っというわけで、本書は独身のみならず、パートナーがいる人にもおすすめです。
相変わらず軽快な文章で、ゴクゴクと飲むように読めます。
魂の退社
こちらはエピソード0的なポジションの本だと思います。
稲垣さんがこういったユニークな生活に至った経緯がいちばん詳細に語られているのが本書。
ここまで数冊読んで、さらに稲垣さんを深掘りしたいと感じた人にはぜひ読んで欲しい1冊です。
その他にも、ミニマリスト本まとめ
その他にもミニマリストが書いた本、ミニマリズムを学べる本をまとめてあります。
ミニマリスト入門書から、マニアックなドキュメントまで。
「ミニマリストなりたい!」
「いろんなミニマリスト参考にしたい!」
と考えている人は、ぜひごらんください。
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